第84章

前田南が振り返った。

大塚雪見が村上聴白と望月琛を伴って、入り口に立っているのが見えた。

「お金に困っているなら私たちに言ってくれればいいのよ。少しは貸してあげられるわ。こんな体を売るようなことをする必要なんて全くないわ。あなたまだ卒業もしていないのに、どうしてこんな風に自分を粗末にできるの?」大塚雪見は前田南を心配しているように見せかけながらも、一言一言が他人に余計な想像をさせるような言い方だった。

「不法侵入って知らないの?」前田南は冷たい目で彼女を一瞥した。

「出ていきなさい」

「琛はここにも別荘を持っているの。今日は彼を訪ねてきたんだけど、庭の入り口であなたの声が聞こえたか...

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